デギン・ザビの遺産相続 代襲相続と数次相続

相続では、誰が先に亡くなったかで結論が大きく変わります。今回は前回に続き、「機動戦士ガンダム」のザビ家を架空事例として、代襲相続、数次相続、相続欠格を考えてみます。
※サスロを含む人物関係は「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」等を含む公式設定を参照しています。作品・媒体による設定差があります。
※以下は日本の民法が適用され、遺言・相続放棄はなく、デギンに配偶者はおらず、ギレンとキシリアに配偶者・子・存命の直系尊属はいないものとした架空の検討です。兄弟姉妹は父母の双方を同じくするものとして計算します。

まず、死亡順を整理
デギンには、ギレン、サスロ、ドズル、キシリア、ガルマの5人の子がいます。サスロは以前に死亡し、ガルマは北米で、ドズルはソロモンで戦死しています。ドズルには妻ゼナと娘ミネバがいます。
その後、デギンは和平交渉に動きますが、ギレンのソーラ・レイによって死亡します。次いでギレンがキシリアに殺害され、さらにキシリアもシャアに殺害されます。
デギンの法定相続人は3人
デギンの相続開始時に生きている子は、ギレンとキシリアです。先に亡くなったドズルの代わりに、その子ミネバが代襲相続人になります。
サスロとガルマに子はいない前提のため、その家系の代襲相続はありません。また、ゼナはドズルの妻ですが、デギンの法定相続人にはなりません。
したがって法定相続分は、ギレン3分の1、キシリア3分の1、ミネバ3分の1です。ミネバが受けるのは、ドズルが生きていれば受けたはずの3分の1です。
ギレンは相続人になれるか
直感的には、父を死亡させたギレンは相続欠格になるように思えます。
民法891条1号は、故意に被相続人などを死亡させ、又は死亡させようとしたために「刑に処せられた者」を相続欠格者としています。
したがって、日本法を当てはめるなら、殺害の事実が明らかであっても、刑に処せられる前に死亡したギレンは、同号の要件を満たさず、民法891条上の相続欠格者とはいえません。(※ただし実務上は、公序良俗や制度の趣旨から相続資格が否定される可能性も議論される複雑な論点です。)
なお、具体的な相続権の行使が信義則違反や権利濫用として争われる可能性は別にありますが、それは相続欠格とは異なる問題です。
ギレンの財産はキシリアだけが相続する?
ギレンの死亡は、デギンとは別の相続です。ギレンに配偶者、子、存命の直系尊属がいないなら、相続人は第3順位の兄弟姉妹です。
生存する兄弟姉妹はキシリアだけですが、先に亡くなったドズルの子ミネバは、ギレンから見ると姪です。兄弟姉妹の子にも代襲相続が認められるため、ギレンの相続人はキシリアとミネバの2人になります。
ギレンが取得したデギンの遺産3分の1は、キシリアとミネバが半分ずつ承継します。この時点で、デギンの遺産に対する持分は、キシリア2分の1、ミネバ2分の1です。
キシリアの相続欠格は?
キシリアもギレンを故意に殺害しています。ただし、キシリアもその後シャアに殺害され、刑に処せられていません。先ほどと同じ理由で、民法891条1号による欠格と断定することはできません。
仮にキシリアが刑に処せられて相続欠格となれば、この前提ではギレンの遺産はミネバが単独で相続します。
キシリア死亡後、デギンの遺産はどうなる?
キシリアに配偶者、子、存命の直系尊属がいない前提では、相続人は兄弟姉妹またはその子です。ザビ家の兄弟姉妹は全員死亡し、子が確認できるのはドズルの娘ミネバだけです。
そのため、ミネバがキシリアの唯一の相続人となります。
ちなみに、シャアはキシリアを殺害していますが、もともとキシリアの相続人ではありません。殺害したからといって、財産を取得するわけではありません。
結論として、デギンの遺産が処分されず、そのまま各相続に引き継がれたと仮定すると、最終的にはミネバがすべて承継します。
なお、キシリアについては、被相続人の殺害を知りながら告発・告訴しなかった者に関する民法891条2号も理論上問題となり得ます。しかし、戦時下の作中世界に日本の刑事手続をそのまま当てはめることはできないため、本記事では検討対象外とします。
代襲相続と数次相続の違い
今回の流れは、次のように整理できます。
ドズルがデギンより先に死亡したため、ミネバがドズルに代わって相続する。これが代襲相続です。
ギレンとキシリアはデギンの死亡後に亡くなったため、それぞれについて新たな相続が発生します。
デギンの遺産分割が終わる前に相続人が相次いで亡くなった場合、実務上は数次相続と呼ばれます。
先に亡くなったのか、相続開始後に亡くなったのかで、相続人も必要な戸籍も変わります。「数次相続」は民法の条文上の用語ではなく、相続手続の実務で使われる表現です。
まとめ
デギンの相続開始時の法定相続人は、ギレン、キシリア、代襲相続人のミネバです。その後、ギレン、キシリアの順に相続が発生し、本記事の前提では、最終的にミネバがデギン由来の財産をすべて承継します。
また、被相続人を殺害したからといって、常に直ちに相続欠格となるわけではありません。民法891条1号では、故意による殺害などに加えて「刑に処せられた」ことが要件です。道義的な評価と、法律上の相続資格は分けて考える必要があります。
相続関係が複雑なときは
現実の相続でも、遺産分割前に相続人が亡くなると、戸籍収集や相続人の確認、遺産分割協議の当事者が増え、手続が複雑になります。
らくだ行政書士おふぃすでは、戸籍収集、相続人の確定、法定相続情報一覧図や財産目録の作成、合意内容に基づく遺産分割協議書の作成などをサポートします。紛争性がある場合や、登記・税務が必要な場合は、関係士業と連携して対応します。
「誰が相続人になるのか分からない」「亡くなった相続人がいる」という段階でも、お気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な制度の解説です。実際の相続人や相続分は、戸籍、遺言、相続放棄、養子縁組、認知、死亡時点その他の事情により異なります。




コメント